その他の脳疾患

もやもや病

もやもや病は、医学的には「ウィリス動脈輪閉塞症」と呼ばれています。頸動脈の狭窄や閉塞によって不足した血流を補うために側副血行路として発達し、脳底部に「もやもや血管」と呼ばれる異常な血管構造が生じます。脳出血や脳虚血を発症しますが、発症のピークは10歳までの子どもと30~40歳代の2つに分けられます。
体の片側麻痺、けいれん、不随意運動、呂律が回らない、視野異常、頭痛、めまい、物忘れなど、さまざまな症状を起こします。脳虚血を起こした場合、症状が短時間で消えてしまうケースもありますが、麻痺やけいれん、感覚異常などの症状を残すこともあります。脳出血を起こした場合には、記憶や判断力などの高次機能障害が残る可能性もあります。症状の現れ方によっては診断がつくまで何年もかかってしまうケースがありますので、脳神経外科など専門的な診療科の受診が不可欠です。急性期には、脳細胞保護薬、抗血栓薬、循環改善薬などを使い、慢性期には、抗血小板薬、抗凝固薬、血管拡張薬、降圧剤などが用いられます。また、手術により、生命予後や機能予後が大幅に改善するというデータが蓄積されています。

一過性脳虚血発作(TIA)

脳の血管が詰まる脳梗塞は命の危険や深刻な後遺症を残す可能性がある発作ですが、その前兆として一過性脳虚血発作という前触れ発作を起こすことがあります。定義では24時間以内に症状が消失するとされていますが、ほとんどは1時間以内に症状がなくなります。放置しているといずれ深刻な脳梗塞を起こす可能性が高いため、一過性脳虚血発作の段階で速やかに受診して適切な治療を受けることが重要です。現在は軽い症状が続く軽度脳梗塞も含め、緊急に治療が必要な病気として認識されています。大規模な調査から48時間以内に脳梗塞を起こす可能性がかなりあることがわかってきているため、症状が消えてもすぐに専門医を受診してください。代表的な症状には、体の片側麻痺、呂律が回らない、歩行・意識・感覚障害、頭痛、けいれんなどがあり、突然起こるということが大きな特徴です。動脈硬化や不整脈(心房細動)がある場合は特に注意が必要です。状態に合わせて抗血小板薬や抗凝固薬を処方し、外科治療が必要になることもあります。また原因となる生活習慣病の治療も必要です。軽い症状でもすぐにご相談ください。

脳動脈解離

動脈の壁は内膜・中幕・外膜という3層構造になっています。動脈解離は、内膜が破れることで発症し、内膜と中膜の間がはがれるケース、中膜と外膜の間がはがれるケースに分けられます。脳動脈で起こる場合、60%以上は椎骨動脈に起こるとされています。内膜と中膜の間がはがれるケースでは、椎骨動脈に解離が起こって脳梗塞を発症します。中膜と外膜の間がはがれるケースでは解離性椎骨動脈瘤を起こし、それが破裂するとくも膜下出血を起こします。脳動脈解離は40歳前後の男性の発症が多く、整体やスポーツなどによって生じることがあります。動脈が解離する際の痛みとして、後頭部や項(うなじ)のあたりに頭痛を起こすことがあります。こうした症状があって受診したことで深刻な発作を起こす前に発見できる可能性があります。その場合には、解離側の椎骨動脈を閉塞する血管内治療が可能です。後頭部や首筋に痛みが起こった場合はすぐにご相談ください。

未破裂脳動脈瘤

脳動脈瘤は、脳の動脈にコブ状のふくらみができている状態で、これが破裂して出血したものがくも膜下出血です。くも膜下出血は発作を起こした1/3の方が亡くなり、1/3の方に麻痺など重い障害が残り、1/3の方が社会生活に復帰できるとされていて、脳血管障害の中でも死亡する確率が最も高く危険な発作です。未破裂脳動脈瘤は、その名の通り破裂していない脳動脈瘤です。この状態で発見できれば手術でくも膜下出血を未然に防ぐこともできます。動脈瘤はかなり大きくなった場合には頭痛などを起こすこともありますが、ほとんどは無症状です。高血圧、動脈硬化、喫煙、頭部の外傷、感染、腫瘍などの危険因子がある場合には、症状がなくてもしっかり検査を受けておくと安心できます。なお、動脈瘤があった場合にもサイズが小さいなどの場合には治療が必要ないケースもあります。

脳腫瘍

脳腫瘍は、頭蓋内に発生する腫瘍で、脳以外にできた腫瘍が転移した転移性脳腫瘍と、脳の細胞から発生する原発性脳腫瘍に大きく分けられます。原発性脳腫瘍は良性が多く、代表的なものに神経膠腫(グリオーマ)があります。主な症状は、頭痛、吐き気・嘔吐、そして視覚異常です。できた場所によって、手足の麻痺やしびれ、言語障害、聴覚障害などを起こすこともあります。遺伝子の変異によって起こるとされていますが、食事やストレス、喫煙なども発症に影響すると考えられています。幅広い年代の方に発症し、進行が速いタイプもありますので疑わしい症状があったらできるだけ早く専門医を受診することが大切です。治療は腫瘍を完全に取り除く手術や放射線治療、化学療法(薬物療法)などが行われます。脳腫瘍と聞くと怖い病気と思われやすいのですが、適切な治療で完治が期待できます。

一番上に戻る
WEB予約 WEB問診