片頭痛

理解することが、第一歩

片頭痛とは片頭痛は人生の時間を奪う苦しみである一方、きちんとした治療を行うと、ほとんどの症状をコントロールでき生活を一変できる可能性があります。

片頭痛はとても複雑な神経の病気です。その分治療も複雑で長時間かかります。でもこれは片頭痛について現代医学でかなり解明が進んでいる証拠です。私の今日一番のお願いは、薬を始めることより、片頭痛を知って欲しい、ということです。理解が治療の一番の近道です。外来診療は、「理解を深める場」です。一度の受診で完璧に理解する必要はありません。分からないことは、何度でもしっかり質問してください。本稿に私の見解をまとめました。是非ご一読下さい。

 

総論

最初は、「片頭痛は頭痛ではない」と知るのが第一歩です。少し難しいですが、症状、病名、病態、原因、誘因、対処法、治療という言葉についてそれぞれ理解しましょう。英語では頭痛=headache、片頭痛=migraineで、全く違う単語です(正式な漢字表記は「偏頭痛」ではなく「片頭痛」)。頭痛は症状を表す単語、片頭痛は病名です。原因は体質です。誘因は、ストレス、睡眠不足、ホルモン、光音匂いなど様々です。病態は主に二つで、脳に異常な電流が流れることと、神経と血管に炎症が起こること(神経原性炎症)です。対処法は生活の中でこうした誘因を避けること、治療は年単位での計画を立てながら薬物療法(薬)を行うこと、です。症状、病名、病態、原因、誘因、対処法、治療の違いがイメージできたでしょうか。

誤解の多い片頭痛

片頭痛という名前は非常に有名ですが、巷では、いわゆる肩こり・ストレス頭痛である緊張型頭痛と混同されていることも少なくありません。以下はよくある誤解です。

✕片側が痛いから片頭痛

✕脈を打つような痛さだから片頭痛

✕家族も片頭痛持ち(自己診断で)だから私も片頭痛

✕片頭痛の薬を出されたから片頭痛

どれも、これだけで、片頭痛とは断定できないものばかりです(本当に片頭痛の可能性もありますが)。

また、治療薬についても、こんな誤解を多々見受けます。

✕トリプタン・ジタンは普通の痛み止めが効かなかった時に使う、ランクの高い痛み止め

これらはそもそも痛み止めではありません。

✕片頭痛の薬を出されたから片頭痛

これは危ないですね。片頭痛の方も片頭痛以外の頭痛(くも膜下出血など)になることはあります。

頭痛ではなく発作─頭痛以外の症状や、発作間欠期の支障も含めて治療する

片頭痛という単語に「頭痛」が含まれていますが、典型的な片頭痛は、予兆→頭痛→嘔気→眠気(とりあえず寝る)と続きます。この他にも、光・音・匂いの過敏症、下痢、鼻づまり、発汗、めまいなども片頭痛の症状です。「頭痛」ではなく「発作」と捉えるとわかりやすくなります。有名なトリプタン・ジタンは頭痛薬ではなく「発作止め」です。片頭痛のある方は発作時以外も、片頭痛発作が来るのではないかという不安を抱え、なんとなく頭がすっきりしない日が続くという生活もされています。これを「発作間欠期の支障」と呼び、これらも治療対象になります。つまり、「発作期」+「発作間欠期」が片頭痛の全体像です。

診断の決め手

国際頭痛分類による片頭痛の診断基準を示します。前兆がある場合、以下のうち2つ、前兆が無い場合は以下の全てが当てはまると片頭痛となります。

  • 人生で5回以上の発作
  • 4時間から3日に渡る発症持続
  • 片側だけ、拍動性、中程度から激しい痛み、日常的な身体動作で症状悪化、のうち2つ以上
  • 吐き気や嘔吐、羞明、音声恐怖のうち1つ以上

国際頭痛分類はちょっと難しいので医師に任せましょう。有名な前兆として「閃輝暗点(せんきあんてん)」がありますが、これは片頭痛の20-30%にしかないと言われ、無いからと言って片頭痛が否定できる訳ではありません。
現実的には「どんどん痛くなる時間があること」「頭痛以外の症状があること」が診断の決め手です。昔は「NHK:N(寝込む)、H(吐き気)、K(感覚過敏)」と言われていましたが、その他にも片頭痛の症状はたくさんあります。

ほとんどの片頭痛の方は、片頭痛と緊張型頭痛と混ざった「混合型頭痛」のケースが圧倒的に多く、「自分が片頭痛どうか」より「自分の頭痛の中で、どれが片頭痛でどれがその他の頭痛なのか」の見極めが大切です。半日から1日かかって頭痛がひどくなったらまず片頭痛ではなく緊張型頭痛を疑い、逆に瞬間的に頭痛が起きたとすると、くも膜下出血や脳動脈解離などの深刻な血管障害や、群発頭痛、RCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)を疑います。

あなたが経験した数々の症状を徹底的に検証し、「片頭痛の要素」を探すのが、頭痛外来の医師・看護師のスキルです。日々の生活の中で「あ、これは片頭痛だ」と診断するのは、患者さんご本人にしかできません。今後の外来通院の中でも、医師・看護師に気になる症状を全て教えて下さい。「それは片頭痛」「それは片頭痛ではない」と答え合わせすることで、さらに理解が深まり、ひいては薬の使い分けに繋がります。

片頭痛のバリエーション

日本には片頭痛持ちの方が1000万人いると言われており、小児では男女差はなく、思春期以降の男女比は1:3になるとされます。症状は、年齢、性別でも症状は異なりますが、同じ人でも複数の片頭痛のパタンを経験することがよくあります。低気圧の時、寝不足の時、月経・排卵の時、発作が3日以上続く時、閃輝暗点がある時、呂律が回らなくなる時、腹痛しかない片頭痛、・・・色々あります。特に10歳~20歳にかけては、片頭痛のパタンもどんどん変わります。それぞれで薬の選び方、使い方にはコツがありますのでご相談下さい。国際頭痛分類では片頭痛だけで30種類以上に分類されます。頭痛専門医はその詳細の分類まで診断し、治療方針を組み立てます。

生活の中での注意事項

厳密には、原因の除去と、誘因の回避は異なります。日常での注意は、主に誘因の回避に相当します。主なものは、心理的ストレスの回避、光・音・匂いの回避、睡眠リズムの維持、極端な空腹や突然の糖質摂取の回避があります。「ストレスを避けた健康的な生活をすることが望ましい」当たり前ですが・・・そんなことができれば苦労しませんよね。制約なく自由な生活を送れるようにするのが治療の本質です。
とはいえ、「頭痛を起こす誘因」と「頭痛を起こさせない治療薬の効果」の差分が、実際の片頭痛として現れます。誘因があり続ければ、どんどん薬が増えてしまいますし、追い付かなくなります。誘因についての知識は持っておいて損はありません。

気圧

回避は困難です。対処は内耳のリンパの水分調整を行う漢方薬(五苓散など)です。

ストレス

過剰な場合は、片頭痛に留まらず、うつ病になることもあります。すぐに減らすことは困難ですが、片頭痛の悪化は長期的な人生プランを見直すきっかけかもしれません。

睡眠

まず睡眠不足は大敵です。次にリズムが大切で規則正しくとることが望ましく、寝だめもよくありません。

感覚への過剰な刺激

直射日光やスポットライト、LEDライトの強い光、ライブ会場などの騒音、柔軟剤などの過度な匂いが片頭痛の誘因になることは、既に経験されていると思います。光過敏専用のサングラス(Acunis)については窓口で販売しております。

炭水化物

「ロカボ(大盛り、お代わり、パンとパスタのように炭水化物+炭水化物は避ける)」「カーボラスト(食事の最後に炭水化物を摂る。先に摂るのは野菜や肉。)」に取り組むことで、片頭痛が激減するというデータが2021年に発表されました。急激な血糖の変化が頭痛に関係するのは間違いなさそうです。

その他食事
アレルギーほど神経質になる必要はありませんが、従来から言われているのは次の通りです。
摂った方がいいもの
  • マグネシウム

炒りごま・ひじき・玄米・大豆・海藻・硬水(ミネラルウォーター)等。処方薬:酸化マグネシウム等。

  • ビタミンB2

うなぎ・レバー類・カレイ・ほうれん草・納豆等。処方薬:ハイボン、ビタノイリン等。

避けた方がいいもの
  • チラミン

赤ワイン(ポリフェノールは関係ありません)、熟成チーズ、チョコレート・ココアなどのカカオ製品、漬け物類、発酵食品、薫製魚、トリの肝臓、イチジク、ナッツ、柑橘類。

その他、ナツシロギク(feverfew;フィーバーフュー)の摂取が有効というデータもありますが、妊娠中には危険であるなど、リスクもあります。

片頭痛は一生続くのか

続きません。残念ながら片頭痛には今のところ根治療法はありません。しかし、患者さん自身の身体も生活環境も変化すること、5年前の知識は使い物にならないくらい医学の進歩が速いことの2つの理由で、将来的に今と状況が変わらないとは到底考えられず、一生片頭痛が続くとは考えられません。

例えば2020年と2025年で治療に対する考え方は全く異なります。現時点で最適な治療を行い、最低限、片頭痛の進行や、薬物乱用頭痛への移行を回避し、目の前の生活の質を改善させましょう。

片頭痛はどんな仕組みで起こるのか

おおざっぱに言えば、片頭痛は脳で起こります。以前は三叉神経血管説という仮説に基づいてあらゆる治療が設計されていました。現在も三叉神経血管説の理解はとても役に立ちます。片頭痛の起こる場所は、脳(中枢)と、脳の外の三叉神経と血管の接続部(末梢)の2か所に分かれます。順を追うと、ストレスなど何らかの誘因で、脳の視床下部で異常な電気信号がスタートし、電流が大脳を駆け巡ったのち、三叉神経という神経から脳の外へ飛び出し、硬膜の血管に炎症を起こす、という流れです。

脳(中枢)での電気信号の異常が、眠気、あくび、嘔気、倦怠感、めまい、閃輝暗点などの予兆や前兆に関わり、三叉神経(末梢)での炎症が拍動性の頭痛本体に関わるとされています。

脳(中枢)での異常な電気信号をCSDcortical spreading depression:皮質拡張延性抑制)と呼び、三叉神経(末梢)で起こる炎症を神経原性炎症と呼びます。神経原性炎症に関わる最も重要な物質がCGRPcalcitonin gene-related peptide:カルシトニン遺伝子関連ペプチド)というタンパク質です。

現在はどう考えられているか

三叉神経血管説をベースに、さらに解明が進んでいます。

複雑で難しすぎる!というのが健全な感想だと思います。医師から見ても複雑です。この図で全ての症状や治療薬の効果は一応説明可能です。これをとりあえず「片頭痛システム」と呼んでおきます。

大切な点は次の通りです。

  • さまざまな誘因が、片頭痛システムを作動させるスイッチを入れる
  • 最後までたどり着くと重症片頭痛発作に至るが、途中だけでも症状は出る(光過敏、倦怠感、嘔気など)
  • スイッチを入れる頻度が多すぎると、自動運転が始まる(慢性化する)
  • 一発で解決する治療は存在しない、するはずがない
  • 薬を順番に試しても意味はなく、組み合わせる必要がある
  • 西洋薬(普通の薬)は片頭痛システムの各ポイントに点で作用する
  • 漢方薬は片頭痛システムに面で作用する(作用点が多い)
  • 人によってシステムエラーの場所は違うので、人によって治療が違う(オーダーメードでしか治せない)

片頭痛を治療しないでいるとどうなるか

学会・専門医では片頭痛は「進行性の中枢神経疾患」と理解されています。放置によって慢性化と脳の機能障害のリスクがあることは残念ながら事実です。
一般に月14日以下の片頭痛を習慣性片頭痛、15日以上の片頭痛を慢性片頭痛と呼びます(厳密には頭痛が15日以上、うち片頭痛が8日以上)。習慣性片頭痛は年間3%の確率で慢性片頭痛に移行するとされ、これは片頭痛が年齢とともに徐々に頻度が増す可能性があるということになります。
何十年という長期間片頭痛を繰り返すことで、脳MRI上の異常(無症候性脳梗塞)が増えること、片頭痛があらゆる認知症と相関関係にあることは多くの文献で証明されています(因果関係は証明されていません)。
絶対に進行だけは抑えないといけませんし、現在はその治療手段があります。国際頭痛学会は2025年に「片頭痛が月4日未満」が良好な状態と定義しました。3日以下なら安全圏、4日以上は進行の危険があると言えます。頓服は治療ではなく発作にとりあえず対処しているだけですので、予防薬だけが治療です。片頭痛は予防薬で治療するというのが大原則です。詳細は後述します。

前兆と予兆の違い

どちらも頭痛が起こる前の症状という点で似ていますが、片頭痛では予兆と前兆を明確に区別します。どちらなのか診断するのは専門医でないと難しいかもしれません。時系列的には、予兆が先で、前兆が後です。重要なのは前兆で、ある方とない方がいます。前兆がある場合は低用量ピルが禁忌となるため、見分けは大切です。国際頭痛分類では人生で2回以上の前兆がないと「前兆あり」とは判定されませんが、1度でもあった場合は「前兆あり」と同様の対応をすることが無難と思われます。

前兆(aura):一過性に脳の機能が障害されるものをいいます。閃輝暗点、感覚障害、片麻痺、呂律難など、あたかも「一過性脳虚血発作(TIA):一時的な脳梗塞」のような症状です。

予兆(prodrome):発作前の漠然とした症状で、症状を説明できる大脳皮質の場所(側頭葉、後頭葉など)が特定できないものをいいます。急に肩がこる、何となく嫌な気分、食欲が落ちる、生あくび、首周りがもやもやする等です。

閃輝暗点のイメージ動画:https://www.youtube.com/watch?v=qVFIcF9lyk8

低用量ピルについて

「前兆のある片頭痛」に対して経口避妊薬(低用量ピル:OCやLEP)は絶対禁忌=使ってはいけないというのは世界中の常識(日本のガイドライン、WHOMEC、UKMEC)です。片頭痛自体でも、低用量ピル単体でも、脳梗塞のリスクが上がるため、その両方が足し算されると非常に危険だからです。頭痛診療ガイドライン2021では、45歳未満での虚血性脳卒中リスクは、前兆があると2倍、喫煙やピル内服があると7~9倍に増加するとされ、前兆がある場合のピル内服は原則禁忌(推奨度A)と記載されています。脳卒中ガイドライン2021ではピルは喫煙よりはリスクは低い、UKMECでは5年以上経過した場合はややリスクが低いと分類されますが、利益を上回るリスクがあると厳しい記載があることに変わりありません。
とはいえ、月経困難症、卵巣嚢腫や子宮内膜症など、婦人科疾患を治療している場合は、治療自体は継続することが望ましく、婦人科医師の判断で、黄体ホルモン製剤(ディナゲスト®等)など低用量ピル以外の治療に変更することが考慮されます。こうした際は、当院と婦人科の連携が望ましく、必要があれば当院から信頼のできる婦人科を紹介します。

片頭痛治療の概略

最初にお話したように、片頭痛は頭痛ではないので、鎮痛薬で治療することはまずありません。片頭痛を治療する理由は、辛いからだけではありません。片頭痛が進行性の神経疾患だから、です。治療の目標は進行の予防であり、そのための基準は、片頭痛発作が月に4日未満におさまる状態です。月4日というのが安全の基準値と覚えておきましょう。治療薬は大きく「急性期治療薬」と「予防薬」の2種類に分かれます。

急性期治療薬

発作を止めるために頓用で使う薬です。有効判定の基準は「投与後2時間で改善し、24時間問題なく過ごすことができ、かつ有害事象がない」とされています。急性期治療薬の有効性が低いと、片頭痛の進行のリスクがあるため、最適な急性期治療薬を選ぶ必要があります。
NSAIDs(ロキソニン®等)やアセトアミノフェン(カロナール®)は間違いではありませんが、鎮痛薬なので片頭痛発作を抑える訳ではなく、効果は限定的です。予防薬をしっかり使っている場合には、鎮痛薬だけでコントロールがつくことがままありますが、それは鎮痛薬が片頭痛を止めた訳ではなく、鎮痛薬は頭痛の部分を抑えただけで、片頭痛発作自体は予防薬により勝手に鎮静化したと解釈できます。

片頭痛専用薬としては1920年代にクリアミン®(発売終了)、1990年代に各種トリプタン、2022年にレイボー®(ラスミジタン)、2025年にナルティーク®(リメゲパント)が発売されています。

進化の過程は、治療ターゲット精度を上げる歴史でもあり、新しい薬ほど安全性(中毒性や血管収縮作用といったリスクが低いこと)が高くなっています。
トリプタンは安価で使い勝手がよく今でも主流です。血管収縮作用のリスクがあるため、当院では必ず使用前に脳MRAを確認しています。トリプタンは使用するタイミングがとても重要で、頭痛がひどくなる1時間前がベストタイミングです。各トリプタン錠の製品情報では、効果が無かった際には、2時間後にもう一度内服してよいと記載されていますが、現在ではそれは意味がないと言われています。
レイボーは、有効性が極めて高く、服用タイミングが1時間遅れても効果が期待できます。めまいと倦怠感が弱点ですが、合う方には強力な武器となります。1回50~200㎎の範囲で調整します。効果も副作用も無ければ増量する必要があります。
ナルティークは、高価ですが、副作用が圧倒的に少なく、有効性にも優れ、24時間効果が持続する強みがあります。繰り返し使えば予防薬にもなり、使い過ぎでも薬物乱用頭痛にならないのが最大の特徴です。

予防薬(※本稿は医薬品の保険適用外の使用を推奨するものではありません)

片頭痛は放置すると進行するリスクがあり、予防療法の目的は、片頭痛の慢性化の予防です。月あたりの片頭痛日数3日以下が安全基準で、そのクリアを目指して予防療法を行います(国際頭痛学会の2025年の声明)。日本のガイドラインでは片頭痛が月2回以上またはひどい頭痛が月に3日以上であれば予防薬を使用することが推奨されています。様々な薬剤があり、その選択、用量調整、効果判定、合併症のマネジメントは、頭痛専門医の腕の見せ所です。片頭痛そのものが複雑なシステムのため、複数の予防薬を組み合わせることも多くなります。
効いたという判定は簡単です。また有害事象で使えないと判定するのも簡単です。しかし、無効という判定は非常に難しく、無効判定や中止は非常に慎重に行う必要があります。安易な中止を繰り返すと、治療選択肢はすぐになくなりますし、MUH(薬物の使用過少による慢性化)を引き起こすリスクも指摘されています。
欧州のガイドラインでは、内服薬は2カ月間、注射薬は3カ月間かけて効果判定するとされていますが、日本の場合は季節の変化がより激しく、さらに時間をかける必要があります。
患者さんのその時その時に応じたオーダーメードの予防薬の組み立てこそ片頭痛治療の真髄であり、頭痛専門医が最もエネルギーを注ぐテーマです。私は、予防薬を次のように分類しています。先ほどの図を参考にしてください。

CSDを抑えるもの
抗てんかん薬

デパケン®・セレニカ®(バルプロ酸)、トピナ®(トピラマート)、ガバペン®(ガバペンチン)、リボトリール®(クロナゼパム)等。デパケン(100~600mg)は日本の片頭痛治療薬の代表、トピナ(12.5~75mg
)は欧米の片頭痛治療薬の代表です。ガバペンはデパケン、トピナでうまくいかない場合に使います。いずれも定期的な血液検査は必須です。

カルシウムチャンネルブロッカー

Ca拮抗薬とも呼びます。一般には高血圧の薬として、アダラート®やアムロジン®が有名ですが、どちらも血圧が下がります。日本で開発されたミグシス®(ロメリジン)は血圧低下作用も少なく、特に治療初期に使いやすい薬です。60mgまで増量するとかなり治療効果が高いことが分かっていますが、日本で認められている用量は40mgが上限です。初期は20mgで開始します。

アンジオテンシンIIAT1受容体拮抗薬

ARBと略します。オルメテック®(オルメサルタン)、ミカルディス®(テルミサルタン)、エンレスト®(バルサルタン配合)などが有名ですが、どれも血圧は下がります。

ベータブロッカー

β拮抗薬とも呼びます。気管支喘息の方は使えません。インデラル®(プロプラノロール)、メインテート®(ビソプロロール)が有名です。もともと脈拍が速い方、緊張しやすい方、小児の体位性頻脈症候群(POTS)、にはとても効果があります。

CGRPに作用するもの

近年注目されているのがCGRPというタンパク質です。片頭痛発作の中心と言える神経原性炎症の主要因とみなされています。2021年以降、CGRPに関連する薬は続々とデビューしています。2021年に発売された抗体薬は非常に高い効果と安全性が期待できることから、欧州、米国では片頭痛予防薬として最初に使うべき薬と位置付けられています。日本では予防薬の2番目として使用可能です。医学上の成人=15歳以上で使用することができます。3割負担で月12000円というコストを除けば「使うべき薬」「片頭痛治療の基本」です。2025年に発売されたゲパントは抗体薬ではなく化学合成薬ですが、内服できるのが大きな特徴です。CGRP受容体抗体薬はCGRPだけでなく、アミリン受容体もブロックします。アミリンは片頭痛に何らかの影響を与えていると予想されていますが、詳細は分かっていません。具体的にはアイモビーグ、ナルティークがアミリンをブロックし、エムガルティ、アジョビはブロックしません。

抗CGRP受容体抗体薬・皮下注射

アイモビーグ®(エレヌマブ)。100%人間の遺伝子から作られているため、腫れなどのアレルギー反応が圧倒的に少ないのが特徴です。注射の痛みも少なく、当院では継続率が最も高い薬剤です。

抗CGRP受容体抗体薬・内服

ナルティーク®(リメゲパント)。2日に1回の内服で予防となり、そのほか、急性期の発作時にも頓服で使えます。アトゲパントも開発中です。

抗CGRP抗体薬・皮下注射

エムガルティ®(ガルカネズマブ)、アジョビ®(フレマネズマブ)。即効性と、切れ味のある、スカッと効いた感じが特徴です。

抗CGRP抗体薬・静脈注射

エピチネズマブが開発中です。

専用ページをご覧下さい。
Glymphatic System(GS)に介入し、脳からCGRPを排除するもの

Glymphatic System(GS)というのは、脳のリンパ系のような水循環システムで、近年MRIの進歩により研究が急激に進むようになりました。GSの機能障害による疾患の代表が、片頭痛とアルツハイマー型認知症とされています。片頭痛の場合はGSの障害で、脳にCGRPが蓄積するとされています。
この機能障害に関与しそうな薬剤は現在のところ五苓散しかありません。五苓散はアクアポリンチャンネルに作用し、脳の水循環を改善することが証明されています。五苓散に準じた、いくつかの漢方薬も同じような効果が期待できそうです。

セロトニンを補充するもの、痛覚中枢に働きかけ異常な痛みを低減するもの

トリプタノール®(アミトリプチリン)、サインバルタ®(デュロキセチン)が代表です。片頭痛発作時、脳は異常にセロトニンが枯渇するため、発作を繰り返している場合はセロトニンの補充が必要です。また、痛みを繰り返すことで脳が異常に痛みに敏感になる状態を中枢性感作と言い「痛くない日がない」状態になります。中枢性感作の治療は時間がかかりますが、これに対しては疼痛治療薬が必要になります。
現実的には三環系抗うつ薬がこれら全てに有効で、強力な武器となります。セロトニンだけ考えれば、理論上最近の抗うつ薬(SSRI)も効きそうですが、なぜか片頭痛への効果は限定的です。

  • 関連領域の治療、対処

先述の片頭痛予防治療は、頭痛専門医による片頭痛治療の核心ですが、核心だけでは治療が進まないこともよくあります。片頭痛予防治療は、片頭痛にとっての「改善因子」ですが、実際は「月経」「不眠」などの「増悪因子」も無視できません。無理やり数式にすると「増悪因子」-「改善因子」=片頭痛回数となります。

増悪因子について、可能な限り治療することが望ましいです。他科の領域になるため、簡易的に各論を述べます。

気候

気圧の変化は内耳が感じ取り、大脳へ信号を送ります。脳は常に気圧変化に対応し続けています。このシステムが過剰だったり、不十分だったりすると、片頭痛の誘因になるとされています(いわゆる気象病)。内耳を整える薬剤には五苓散が存在します。めまいを伴う場合はセファドール®(ジフェニドール)も有効です。

エストロゲンの急激な低下

月経、排卵、更年期で起こります。婦人科でのホルモンコントロール(ピル、ミニピル、黄体ホルモン製剤)はホルモンの変動を整え、頭痛改善に働く場合もあります。純粋に頭痛だけのことを考えれば、ホルモンを安定させてしまうことがベストですが、ホルモンは頭痛だけに関わる訳ではないので、婦人科医の専門的な判断が必要です。黄体ホルモン製剤が広く使われるようになってきていますが、内服薬ディナゲスト®(ジエノゲスト)は血栓症のリスクがなく、理論上、頭痛にとっても良い方向に働きます(開始後2-3か月は一時的に頭痛が増えることもありますが、その後安定します)。ミレーナ®の子宮内留置は局所投与なので良くも悪くも頭痛には影響しません。漢方薬のいわゆる女性三剤(当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸)はエストロゲンのような作用を持つことで頭痛を改善させるとされています。頭痛専門医による頭痛治療だけで月経時片頭痛が改善しきらない場合は、信用できる婦人科医の力を借りること(紹介・併診)を提案します。

睡眠障害

睡眠に関係する神経ペプチドである、オレキシン、メラトニンの欠乏は片頭痛にも影響するとされています。睡眠障害(入眠障害、中途覚醒など)は目に見えて頭痛を悪化させるため、頭痛専門医も治療を行います。ベルソムラ®、デエビゴ®、クービビック®、ボルズィ®はオレキシンを増加させ、ロゼレム®はメラトニンを増加させます。それ以上の睡眠の治療は、適応障害やうつ病などとの関係も評価が必要となるため、信頼できる精神科医へ紹介します。

  • 月経時片頭痛の治療

月経開始2日前から月経3日目までの頭痛を月経時片頭痛と言い、頭痛の時間が長く、痛みも強いのが特徴です。通常の片頭痛に加え、エストロゲン、プロスタグランジンという物質が関与する仕組みが加わるため、急性期治療に一工夫必要です。

通常は、トリプタンにNSAIDsを同時併用する方法をとります。NSAIDsは何でもよいですが、トリプタンは特にアマージ®(ナラトリプタン)、ゾーミッグ®(ゾルミトリプタン)が有用です。予防治療は月経時片頭痛にも有効ですが、頭痛外来の最大限の治療だけではどうしても解決できない場合もあり、その際は婦人科にホルモン療法を依頼することがあります。

  • 妊娠中に使える薬

妊娠中、特に後半になると片頭痛の痛みは60-80%の女性で大幅に減少するため、薬剤の出番自体が少なくなります。各薬剤の妊娠への影響を表にまとめました。

最終月経初日~27日目は無影響期で特に心配はいりません。4~12週では胎児の器官形成期のため、薬剤の使用は極力控えてください。13週以降は、催奇形性は問題になりませんが、胎児への毒性が問題となります。

現実的に使える薬は、トリプタン、カロナール®に限られ、どうしても予防薬が必要な場合は、トリプタノール®30mg/日以下)、インデラル®とし、分娩2-3週前に中止しましょう。

妊娠の予定がある場合は、必ず医師に伝えて下さい。また、妊娠した場合は、すぐに内服をやめ、ご連絡下さい。

一方、授乳については、バファリン®、クリアミン®以外、ほぼ全てのトリプタンと予防薬が使用可能です。

レイボー®CGRP関連予防薬は、おそらく安全と推測されますが、データが不十分です。

  • 小児~10代の片頭痛

基本的な考え方は成人(医学的な成人=15歳)と同じです。ただ、経験上、若年であるほど、急性期治療薬はトリプタンを使わず鎮痛薬で十分な効果を発揮する場合が多いです。鎮痛薬はカロナール®(アセトアミノフェン)、ブルフェン®(イブプロフェン)を体重換算した量で使用します。その他制吐剤も使います。予防薬としてはハイボン®(ビタミンB2)は安全性が高く有用です。

重症度評価、目標設定、長期治療計画

片頭痛に限らず、病気の治療は目標設定と、長期の治療計画が不可欠です。国際頭痛学会の声明や国内・海外ガイドラインに準拠し、当院での予防治療は「月の片頭痛日数が4日未満=3日以下」を第一目標にしています。頭痛重症度のスコアリングでは概ね「HIT-6が50点以下、MIBS-4が4点以下」に該当します。HIT-6(ヒットシックス)、MIBS-4(ミブスフォー)は片頭痛の重症度を測るもので、HIT-6は頭痛そのものの重症度、MIBS-4は頭痛間欠期(片頭痛発作が起きていない時の頭痛に備える辛さ)を測定します。
当院では月に1回はWeb問診で両者を測定します。その後、1.5年~2年の間目標達成を継続したら、慎重に予防薬を減らし、最終的には薬が要らない状態を目指します。

年単位での治療になると、進学、就職、出産など様々なライフイベントがありそれに合わせて治療フェーズも調整する必要があります。「治療」と名がつくからには、診断、計画、実行の全てのステップを確実にこなす必要があります。そもそもの目的は「片頭痛の慢性化の予防」「将来の脳障害の回避」です。治療が進まないと、良いアウトカムを得るのは難しいと考えます。

さあ治療を始めましょう!

効果的な治療のために早めの受診をおすすめします早期治療と予防薬の重要性、目標を持った治療計画が大切なのは先述の通りです。その過程で、市販薬を含め、薬の使用量が大幅に減ることも体感してください。最初のゴールは、安全かつ、内服回数、通院頻度、副作用、費用など全て含めて最も快適な治療方法にたどり着くことです。最低でも2,3カ月かかりますし、年単位になることもあります。受験など大事なイベント前でどうしても急ぐ場合は、薬の使い方も若干異なります。当院では、以下のステップで片頭痛の治療にあたります。

Step.1 血液、MRIのチェックを済ませる(初診)

全く違う原因で頭痛になっていないか、今後治療薬を使っても問題がないかを確かめます。甲状腺ホルモンの確認、低用量ピル内服の確認は大切です。また、トリプタンは「脳血管障害がある場合は禁忌」ですから、当院ではMRIで異常が無いことを確認してから処方します。

Step.2 自分で片頭痛かどうかが分かる

緊張型頭痛(「普通」の頭痛)と混ざっている場合がほとんどです。外来で見分け方を説明しますので、最初のうちは頭痛記録をつけながら、片頭痛発作、特にその始まりを見分けられることを目指しましょう。

Step.3 自分に合ったトリプタン・ジタンを上手く使えるようになる(2回目の外来)

トリプタンは片頭痛対処の基本で、5種類あります。MRIで脳血管の異常が無いことを確認できたら処方します。トリプタンの次世代型とも言えるジタンは2022年に第1号の「ラスミジタン」が初めて発売されました。脳の血管の異常の有無に関わらず使用可能で、トリプタンで問題だった「飲み遅れ」の心配がありません。トリプタンが効かなかったら、内服のタイミングが合っていないか、その時の頭痛は片頭痛ではない可能性があります。またトリプタン・ジタンが効いたものの、副作用が強ければ、違う種類のトリプタン・ジタンに変えた方が良いかもしれません。それぞれの特性を理解できれば、全種類試しても構いませんが、大抵は2、3種類くらい試すと、決まったものに落ち着きます。結果を記録し、外来で報告してください。

Step.4 片頭痛の回数を数えられる

トリプタン・ジタンを使いこなせるようになると、週または月に何回片頭痛が起きているかが数えやすくなるはずです。片頭痛は何日か連続したり、全く無かったりと、散発的に起こるのが普通です。また1回の発作が最大3日続くこともあり、その場合は1回と数えましょう。

Step.5 自分に合った予防薬の選択ができる

予防薬は原則として毎日内服する薬です。予防薬の導入の最大の目的は、薬物乱用頭痛(月に10回以上トリプタンやジタンを内服すること)を回避することです。それは、トリプタンを10回以上使うのは我慢するのではなく、10回以下で済むように予防薬を調整するということです。月に2回以上であれば「予防薬を使っても良い」、8回を超えたら「予防薬使用が強く勧められる」状態です。その他、前兆のみで頭痛が起きない片頭痛の場合、片麻痺型片頭痛の場合、トリプタンが身体に合わない場合、脳動脈瘤など脳血管障害や何らかの理由でトリプタンが使えない場合は、予防薬のみで片頭痛が起こらないように抑え込む手段があります。

頭痛記録とスコアリング

痛みは自分にしか分からず、薬を飲む判断は自分でするしかありませんが、記録・スコアをつけることで、治療の精度はグンと上がります。スコアはWeb問診にお答えいただくことで自動的に算出されるようにしています。頭痛記録は目的が診断か治療の効果判定か、により書き方も変わります。院内にある実際の記録を参照してください。

片頭痛発作のフェーズと対応する薬

American Migraine Foundation. “Understanding migraine progression can help you anticipate and manage your symptoms” Accessed December 31, 2021. Dr.Savitra. “Migraine” Accessed December 31, 2021. 上記および頭痛の診療ガイドライン2021を参考に作成。

代表的な片頭痛治療薬

急性期治療薬
分類名 細分類 製品名(先発品) 一般名(ジェネリック) コメント 妊婦 授乳
5-HT
1B/1D
作動薬
アルカロイド クリアミン エルゴタミン 生産終了。
短時間作用型
トリプタン
イミグラン スマトリプタン 強め。用量2段階。点鼻・注射も。 B3 L3
マクサルト リザトリプタン 強め。用量1段階。口で溶ける。 B1 L3
レルパックス エレトリプタン やや弱め。用量2段階。 B1 L3
長時間作用型
トリプタン
ゾーミッグ ゾルミトリプタン 強め。用量2段階。口で溶ける。 B3 L3
アマージ ナラトリプタン やや弱め。用量1段階。 B3 L3
5HT-1F
作動薬
ジタン レイボー ラスミジタン
(ジェネリック未発売)

安全性が高い。内服タイミングが遅れても有効。用量3段階。

×~△
対CGRP CGRP受容体拮抗薬 ナルティーク リメゲパント
(ジェネリック未発売)
制吐剤 ドパミン拮抗薬 プリンペラン メトクロプラミド 嘔気への効果のほか、鎮痛薬と併用することで片頭痛を穏やかに緩和。 A L2
ナウゼリン ドンペリドン B2 L3
鎮痛薬 NSAIDs
消炎鎮痛解熱薬
ロキソニン ロキソプロフェン 月経時片頭痛の際にトリプタンと併用。胃潰瘍、腎障害、喘息に注意。
胃薬と併用。脱水を避ける。
(C) (L2)
ブルフェン イブプロフェン C L1
ボルタレン ジクロフェナク C L2
セレコックス セレコキシブ 12時間持続。比較的胃に優しい。 B3 L2
中枢性鎮痛解熱薬 カロナール アセトアミノフェン 肝障害に注意。胃潰瘍を起こさない。
1回500-1000mg、1日最大4000mg。
A L1
制吐剤 ドパミン拮抗薬 プリンペラン メトクロプラミド 嘔気への効果のほか、鎮痛薬と併用することで片頭痛を穏やかに緩和。 A L2
ナウゼリン ドンペリドン B2 L3
使用すべきではないもの ピリン SG 顆粒
セデス
イソプロピルアンチピリン ピリン系に属する解熱鎮痛薬。重篤な副作用により、製造販売が禁止された国もある。副作用:発疹、血液障害など。
催眠・鎮静剤 バファリンプレミアム、ロキソニ ン プ レ ミ ア
ム、セデス、ノーシン、イブ、ディパシオ等
アリルイソプロピルアセチル尿素 1926 年発売。中毒死、出血性紫斑病などの重篤な副作用があり 1930~1940 年代には欧米で使用が警告・禁止された。その他有害事象の報告が続き現在は日本のみで使用されている。
ナロン等 ブロムワレリル尿素 1907 年発売。急性中毒で死亡することから、当初から自殺目的での使用が相次ぎ戦後も 1950~60 年代の第二次自殺ブームの主役。副作用は頭痛、嘔気、脳萎縮、精神症状など。

 

予防薬
分類名 細分類 製品名(先発品) 一般名(ジェネリック) コメント 妊婦 授乳
対CGRP CGRP抗体 エムガルティ ガルカネズマブ CGRPそのものを除去する。 B1 ND
アジョビ フレマネズマブ B1 ND
eptinezumab 静脈注射薬 開発中
CGRP受容体抗体 アイモビーグ エレヌマブ CGRPを作用させない。 B1 ND
CGRP受容体拮抗薬 ナルティーク リメゲパント
(ジェネリック未発売)
CGRP を作用させない。発作時に頓服でも使用可能。内服、口で溶ける。 B1

ND

atogepant 開発中
対PACAP Lu AG09222 開発中
CSD抑制 Caチャンネル
ブロッカー
ミグシス ロメリジン 頭痛の持続時間を減らす。 回避
アムロジン アムロジピン 強い降圧作用。 C L3
ARB オルメテック オルメサルタン 強い降圧作用。 D L3
βブロッカー インデラル プロプラノロール 交感神経を抑え、過緊張に有効。体位性
頻脈症候群。徐脈、血圧低下。喘息不可。
リザトリプタンと併用不可。
C L2
抗てんかん薬 デパケン
セレニカ
バルプロ酸ナトリウム 主に 100~600 ㎎。国内で代表的。用量
調整の幅が大きい。
トピナ トピラマート 欧州で代表的。12.5~75 ㎎。
リボトリール クロナゼパム 強力な抗不安作用。安価。
セロトニン補充 三環系抗うつ薬 トリプタノール アミトリプチリン セロトニン補充、疼痛中枢の調整の 2 つの作用。薬物乱用頭痛、緊張型頭痛などあらゆる頭痛に有効。低用量で疼痛の治療、高用量で抗うつ。 C L2
漢方薬

温める

 

 

呉茱萸湯 31:ごしゅゆとう 冷え性など体質に併せて使う。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯 38:とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう 呉茱萸湯より生薬多い。血流改善で全身
の冷えもカバー。胃に刺激的。
桂枝人参湯 82:けいしにんじんとう

水を整える片頭痛治療の基本

五苓散 17:ごれいさん エビデンス豊富。glymphatic system の改善で脳からの CGRP の排泄を促進する可能性。内耳浮腫改善で気圧変化に対応。浮腫み、めまいにも。
蒼朮(ツムラ):排水。白朮(クラシエ):
排水+保水。

五苓散の応用

 

 

柴苓湯 114:さいれいとう 五苓散の強化版。甘草配合。
半夏白朮天麻湯 37:はんげびゃくじゅつてんまとう 五苓散+六君子湯。起立性調節障害、めまい、胃腸虚弱。
苓桂朮甘湯 39:りょうけいじゅつかんとう 五苓散+血管拡張。起立性調節障害、めまい、不安、動悸。

女性三剤
エストロゲンを補う

 

 

当帰芍薬散 23:とうきしゃきやくさん 冷え、浮腫み。
加味逍遙散 24:かみしょうようさん イライラ、不安・不眠、のぼせ。
桂枝茯苓丸 25:けいしぶくりょうがん 肩こり、のぼせ。

筋肉のこり

 

葛根湯 1:かっこんとう 筋肉の血流増加。緊張型頭痛にも。
芍薬甘草湯 68:しゃくやくかんぞうとう 強い筋弛緩。甘草多め。

妊婦:オーストラリア基準(A,B1:可、B2,3:禁とは言えない、C,D:禁。)
授乳:Hale’s lactation risk rating(L1:可、L2:おそらく可、L3:おそらく安全、L4:おそらく危険)

主な市販薬の成分一覧(単位はmg)

成分 アセトアミノフェン ロキソプロフェン イソプロフェン アセチルサリチル酸 エテンザミド イソプロピルアンチピリン アリルイソプロピルアセチル尿素 ブロムワレリル尿素 無水カフェイン
NSAIDs ピリン 鎮静剤
処方薬 カロナール <1000
ロキロニン 60
ブルフェン 200
バファリンA330 660
SG顆粒 250 150 60 50
市販薬 バファリンA 660
バファリンライト 440
バファリンプレミアム

130

130 60 80
バファリンプレミアムDX 160 160 50
バファリンルナi 130 130 80
ロキソニンS 60
ロキソニンSプラス 60
ロキソニンSクイック
ロキソニンSプレミアム 60 60 50
イブA錠

150

60

80
イブA錠EX 200 60 80
イブクイック 150 60 80
イブクイック頭痛薬DX 200 60 80
タイレノールA 300
新セデス 160 400 60 80
セデス・ハイ 250 150 60 50
セデス・ハイG 250 150 60 50
セデスV 160 400 60 80
セデスファースト 160 400 80
セデスキュア 150 60 80
ノーシン 300 160 70
ノーシンピュア 150 60 80
ノーシンアイ 65 150
ノーシンエフ200 200
リングルアイビー 150
リングルアイビーα200 200
ナロン 265 300 200 50
ナロンエースプレミアム 150 500
ナロンエースT 144 84 200 50
ディパシオIpa 150 60 80
参考 レッドブル250ml 80
リポビタンD 50
コーヒー140ml 80
イソプロピルアンチピリン

ピリン系に属する解熱鎮痛薬。重篤な副作用により、製造販売が禁止された国もある。副作用:発疹、血液障害など。

アリルイソプロピルアセチル尿素

鎮痛薬ではなく催眠・鎮静剤。1926年デビュー。中毒死や、出血性紫斑病などの重篤な副作用があり1930~1940年代には欧米で使用が警告・禁止された。その他有害事象の報告が続き現在は日本のみで使用されている。

2025年4月より韓国の「法律で定められた麻薬類成分481種」に指定され、持ち込み禁止措置が開始された。オーストラリアの医薬品規制当局(TGA)も、アリルイソプロピルアセチル尿素を含む製品について重大な健康リスクがあるとして、同国内での販売、供給、使用を禁止している。

ブロムワレリル尿素

催眠・鎮静剤。1907年デビュー。急性中毒で死亡することから、当初から自殺目的での使用が相次ぎ戦後も1950~60年代の第二次自殺ブームの主役となった。副作用は頭痛、嘔気、脳萎縮、精神症状など。

カフェイン

近年ではアッパー系ドラッグと認識されている。1回量でエナジードリンク1本に相当することに注意。1日200mgを越えると頭痛の原因になることがある。中毒性あり。

CGRP関連製剤一覧

※保険組合によっては、「付加給付」制度で補助が出る場合があります。詳細は医師と保険組合にご確認下さい。

商品名 エムガルティ
Emgality
アジョビ
Ajovy
アイモビーグ
Aimovig
ナルティーク
Nurtec
一般名 ガルカネズマブ フレマネズマブ エレヌマブ リメゲパント
海外承認日 2018年9月(米国) 2018年9月(米国) 2018年5月(米国) 2020年2月(米国/急性期治療として)
2021年5月(米国/発症抑制として)
国内発売日 2021年4月 2021年8月 2021年8月 2025年12月
製剤分類名 ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤 ヒト抗CGRP受容体モノクローナル抗体 化学合成薬
原理 CGRPに結合し、CGRPを無力化する CGRPの受容体に結合しCGRPを作動不能にする
使用方法 ご自宅で自動注入器を使って皮下注射 口で溶ける内服
初月2本注射
その後毎月1本注射

4週間ごと1本注射、または
12週間ごと3本注射(院内)

4週間ごと1本注射 急性期薬:頓服1回1錠
予防薬:2日に1回1錠
有効成分(1本中) ガルカネズマブ120mg フレマネズマブ225mg エレヌマブ70mg リメゲパント75mg
添加剤(1本中) L-ヒスチジン 0.5mg
L-ヒスチジン塩酸塩水和物1.5mg
ポリソルベート80 0.5mg
塩化ナトリウム8.8mg
エデト酸ナトリウム水和物0.204mg、 L-ヒスチジン 0.815mg
L-ヒスチジン塩酸塩水和物3.93mg
ポリソルベート80 0.5mg
精製白糖73mg
精製白糖73mg
ポリソルベート80 0.1mg
pH調整剤 適量
ゼラチン
D-マントニール
スクラロース
香料
1本あたり薬液量 1.0mL 1.5mL 1.0mL
薬液pH 5.3-6.3 5.2-5.8 5.2
浸透圧比(対生理食塩水) 約1 約1.0-1.6 1
当院での注射方法 自動注入器 手動または自動注入器 自動注入器
注射針 27G(0.4mm)
注射針が刺さる長さ 5mm 非公表 6mm
妊婦、授乳婦への投与 十分検討 十分検討 十分検討 十分検討
18歳未満への投与 不可 不可 不可 不可
血中濃度が最高に達するまでの日数(tmax) 4.6日(1本の場合) 7.0日(1本の場合)
5.0日(3本の場合)
5.6日 1.75時間
皮下注射なので全身に行きわたるまでに多少時間がかかります
血中濃度が半減するまでの日数(t1/2) 28.7日(24.8-32.8日) 33.6日(1本の場合) 28日 10時間
半減が直ちに効果減弱につながる訳ではありません
1本あたりの薬価 原価;42,638円/本
3割負担:12,791円/本
原価;39,064円/本
3割負担:11,719円/本
原価;38,980円/本
3割負担:11,694円/本
2,923.20円/錠
3割負担:876.96円/錠
予防28日分の3割負担:12,277.44円/14錠
注射手技料(当院)

220円(3割負担66円);院内注射の場合当院が頂く金額です。

※在宅自己注射の場合は、指導料が別途発生します。

3割負担での初回負担額
(再診料等を除く)
25,582円(初回2本の合計) 11,719円 11,694円 処方箋料
+
薬局でのお支払い
同、初月から3か月分(11週間) 51,164円(3回分=4本) 35,157円(3回分) 35,082円(3回分) 院外処方
同、初月から1年分(56週間) 166,283円(12回分=13本分) 152,347円(13回分) 152,022円(13回分) 院外処方
2ヵ月目以降~1日当たりの負担(3割負担)


約400円

院外処方
重篤な副作用 アナフィラキシー アナフィラキシー アナフィラキシー
腸閉塞を伴う便秘
アナフィラキシー
1%以上の確率で起こる副作用 注射部位疼痛(10.1%)
注射部位反応(紅斑、掻痒感、内出血、腫脹など)(14.9%)
注射部位疼痛(21.9%)
注射部位硬結(19.3%)
注射部位紅斑(17.7%)
注射部位反応(掻痒感、発疹など)
便秘(1.5%)
注射部位反応(1.5%)
白血球減少(1.5%)
傾眠(2.2%)
便秘(2.8%)
薬剤に対する抗体出現率 15.5%/1.5年 2.3%/1年 9.8%/5年
中和抗体出現率 13.8%/1.5年 0.95%/1年 0.8%/5年
薬剤に対して人体が作る抗体を中和抗体という。抗体が出現すれば、薬剤の効果が減る可能性がある。しかしCGRP関連製剤においては、抗体出現は確認されていても、なぜか薬剤の効果が落ちないというデータがある。
特記事項 先に発売されたため既に当院でも使用実績が多い。初回2本注射のためより即効性が期待できる。

12週間分3本をまとめて打つ、という方法がある。

完全ヒトモノクローナル抗体製剤のため、中和抗体出現率が低く、腫れにくい。 予防薬として飲んだ日は頓服できない。ミント味。
2025年1月末までの当院導入数(のべ)

464名(在宅257名)

379名(在宅202名) 354名(在宅206名)

 

CGRP関連製剤は、抗CGRP抗体の エムガルティ®(ガルカネズマブ)、アジョビ®(フレマネズマブ)、抗CGRP 受容体抗体のアイモビーグ®(エレヌマブ)の3剤を指します。これらについては専用ページをご覧ください。

当院看護部が答えるQ&Aページもぜひご覧ください。

当院の片頭痛治療

片頭痛の治療は、頭痛の改善とは意味が全く異なります。片頭痛はとても複雑な病気であり、真面目に取り組むと非常に難しい疾患です。しかし私たちは真面目に取り組みます。

「頭痛がよくなりました、良かった」という単純な結果は目指しません。「良いけど、それでどうするの」への答えを探し続けます。

私たちは患者さんより、常に高い目標を設定し、目指します。医師が限界を定めれば、それ以上の改善は決してないからです。治療の最終段階ではmedication-free、薬が無くても日常を送れる状態を目指します。かつてそんなものは無理だ、とされてきました。しかし現在の私たちの手には、様々な治療手段があります。不可能ではありません。目標を達成し、卒業した患者さんは何人もいます。

直接的な病態の管理としては、皮質拡延性抑制、グリンパティックシステム障害、神経原性炎症、痛覚変調性疼痛の4本柱のバランスを見極め、各々のバランスを取った最適な治療法を探します。

間接的な増悪因子の管理としては、婦人科系疾患、精神科系疾患の見極め、環境調整の提案を行います。

調子が良い時は何故良いのかを、悪い時は何故悪いのかを、徹底的に分析します。

「光・音を避けろ」「特定の食事を避けろ」「ストレスを避けろ」「睡眠をとれ」という制約だらけの生活やその指導は、終わらせなければいけません。生きる上では、無理してでも乗り越えなくてはならない困難が、必ずあるからです。

頭痛記録もいつか終わらせなければなりません。あなたは頭痛の為に生まれてきたわけではないからです。

「片頭痛持ち」を決してアイデンティティにしてはいけません。自由に生きるために片頭痛の治療を行うのです。自由を勝ち取るためには年次にわたる治療を戦いぬく必要があります。目標、戦略のない治療は、治療とは言えません。私たちの最終目標はいつも明確です。あなたがあなたの命を自由に生き切ることです。

ですから私たちは、頭痛ではなく、あなたを診ます。あなたが私たちの並走から卒業するために全力を挙げます。その為には、頭痛以外のあらゆる苦悩も、医師という立場からできる範囲で最大限サポートします。

当院の処方は、患者さんごとに違います。同じ患者さんでも時期により異なります。同じになる訳がありません。ガイドライン通りに薬を使えば治るほど、病気は甘くありません。

戦いの途中、薬で副作用が出ることもあるかもしれません。ひどい片頭痛発作が重積することもあるかもしれません。しかし、決してあきらめてはいけません。私たちと、粘り強く、一緒に未来を目指しましょう。

あなたにもお願いがあります。私たちと一緒に勉強してください。そして自由な未来への意思を持ち続けてください。

簡単ではありません。簡単ではないから私たちがいます。

まず、ありのままのご自身で、ドアをノックしてください。あなたの物語を、伝えて下さい。人生には限りがあります。片頭痛に時間を奪われるのは、終わりにしましょう。お待ちしております。

 院長 石井 翔

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