睡眠は三大欲求の1つであり、健康を維持するためにも重要な要素の1つですが、現在世界中では数億人が不眠症に悩まされていると言われています。
この記事では不眠症の基礎知識から原因や対策法まで詳しくご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
不眠症とは?
不眠症とは、「寝つきが悪い」「一度寝てもすぐに目が覚めてしまう」「朝早くに目が覚めてその後も眠れない」「眠りが浅い」など睡眠に問題があることで、日中に意欲・集中力・食欲が低下したり、倦怠感を感じたりと体に不調が出現する病気です。
夜眠れないことは誰にでもありますが、多くの場合自然に改善して再び眠れるようになります。不眠にはストレス、病気、薬の副作用など様々な原因があり、それに応じた対処が必要です。
また、慢性化した不眠症の場合は回復しにくいため、放置せずに適切な治療を受けることが大切です。日本では約5人に1人が不眠に悩んでいるとされており、その割合は男性よりも女性に多く、加齢とともに増加します。
不眠症が起こる原因は何がある?
- 睡眠習慣の問題・睡眠リズムの乱れ
- 心理的ストレスなどの要因
- 薬やアルコール等などの薬の原因
- 生理学・身体的な要因
- 睡眠障害などの要因
睡眠習慣の問題・睡眠リズムの乱れ
夜勤や当直など交代制の勤務や時差などで体内リズムが乱れると不眠を招くことがあります。
24時間社会と言われる現代では昼と夜の区別がなくなってきており、睡眠リズムが崩れやすいと言われていますが、睡眠と覚醒は体内時計で調整されているため、睡眠のリズムを整えるためには就寝時間と起床時間を統一することが大切です。
週末の夜更かしや寝坊、長時間の昼寝は体内時計を乱すリスクがありますので注意しましょう。
日中に眠気がある時は、午後3時までに30分以内の昼寝をすると体内時計に大きな影響を与えることなくパフォーマンス向上にも効果的です。午後3時以降に長時間の昼寝をしてしまうと、夜に眠れず体内のリズムが乱れてしまう可能性があるので注意しましょう。
心理的ストレスなどの要因
心と体は密接に関わっており、心理的なストレスも睡眠を妨げる大きな要因になります。また、神経質で生真面目な性格の人は、眠れないことにさらなるストレスを感じ、不眠にこだわりやすいため、不眠が慢性化する傾向にあります。
どうしても眠気がない時は一度ベッドや布団から出てみましょう。
不眠が続くと「今日も眠れないかもしれない…」という不安で焦れば焦るほど目が覚めてしまうという「不眠恐怖」のせいで慢性的な不眠症になってしまう方が多いです。
ベッドや布団の中で「早く寝ないと…!」と焦って考えすぎるのではなく「どうせいつかは眠くなる!」くらいに割り切った方が良い結果をもたらすため、眠れないことを気にし過ぎないようにすることも大切です。
薬やアルコール等などの薬の原因
病気の治療薬が原因で不眠をもたらすこともあります。睡眠を妨げる主な薬としては、降圧剤・甲状腺製剤・抗がん剤などがあり、抗ヒスタミン薬では日中に眠気が出ます。眠れなくなる薬のほかにも日中の眠気が副作用としてある薬を内服している場合、生活リズムが乱れて不眠につながる場合もあります。
特に薬の内服をしていなくても、寝る直前の飲み物には注意が必要です。コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインには覚醒作用に加えて利尿作用もあるため、眠りを妨げ、トイレによる覚醒の回数も増えます。
また、アルコールを摂取すると寝つきがよくなるように思えますが、短時間しか効果はなく、深い睡眠ができずに早朝覚醒が増えてきます。寝るためにお酒を飲むのは睡眠の質を下げることにつながるので注意しましょう。
生理学・身体的な要因
身体の病気などが原因で不眠が起こることもあります。怪我や関節リウマチなどの痛みを伴う疾患や、アレルギーや蕁麻疹などの痒みを伴う疾患ではなかなか眠りにつくことが出来ません。もし眠れたとしても眠りが浅くすぐに目が覚めてしまいます。
このほかにも、海外旅行後の時差ボケも睡眠のリズムを崩し、不眠の生理的な要因になる可能性が高いです。
また、部屋の明るさや室温が不適切な場合、騒音などの睡眠環境も不眠の原因になることがあります。アイマスクや耳栓、遮光カーテンを使用するなど、睡眠環境を整えて睡眠の質を高める工夫をしましょう。
睡眠障害などの要因
睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)など、睡眠に伴って症状が出現する睡眠障害によって不眠症が出現することもあります。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が浅くなったり、止まったりすることによって体が低酸素の状態になる病気で、息苦しさで目が覚めることもありますが、大抵の場合は無自覚のことが多く、日中の眠気や倦怠感、家族からのいびきの指摘などで発覚することが多いです。
レストレスレッグス症候群は、主に夕方から夜間にかけて足の不快感からじっとしていられなくなる病気です。これらの病気は適切な治療で症状を抑えることが出来るため、原因を取り除けば不眠も改善されるかもしれません。
不眠症の種類やタイプについて
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟睡障害
入眠障害
入眠障害とは寝床に入ってもなかなか寝付けず、それを苦痛と感じる状態で、不眠症の訴えの中で最も多いタイプです。ベッドや布団に入ってから眠るまでの時間は個人差が大きいため、苦痛を感じる時間にも個人差があります。
しかし、一般的には消灯から入眠までは30分以内程度と言われているため、それ以上の時間がかかり、またそれによって苦痛や支障を感じている場合は入眠障害と言えるでしょう。
就寝前は、コーヒーなどのカフェイン摂取や、スマートフォン・パソコンの強い光は避けるなど、入眠を阻害するものを出来るだけ取り除くことが重要です。
中途覚醒
中途覚醒とは、一度入眠した後翌朝の起床までに何度も目が覚めてしまい、寝付けなくなってしまう状態を指します。
もし真夜中に目覚めてもすぐに眠ることが出来る場合は問題ないですが、再度眠れなかったり、寝ても熟睡出来ずまたすぐに目が覚めたりしてしまう場合は中途覚醒の可能性が高いです。
主な原因としては加齢によって睡眠が浅くなったり、夜間トイレで目が覚めたりすることが挙げられます。
しかし、高齢者だけでなく環境の変化、学校や仕事などのストレスで夜中に何度も目が覚めるという若者も少なくありません。
早朝覚醒
早朝覚醒とは自分が望む起床時間より、2時間以上前に目が覚めてしまいその後二度寝出来ない状態のことを指します。十分な睡眠時間が確保出来ず、睡眠不足に陥るため日中に眠気や倦怠感を感じやすくなります。
中途覚醒と同じく、加齢と共に増加すると言われていますが、最近は若い世代でも悩んでいる人が増えている不眠症の1つです。
また、生活習慣やストレスなどに加えて更年期障害が原因となっている場合もあります。
更年期というと女性のイメージが強いかもしれませんが、男性にも存在しており、性別に関わらず更年期には不安や抑うつなどの症状が現れることもありますので、注意が必要です。
熟眠障害
熟眠障害とは睡眠時間は十分とっているはずなのに、熟睡感がなく眠りが浅い状態のことを指します。眠れなかったり、途中で覚醒したりするわけではないため、他の睡眠障害と比較すると、本人が自覚しにくいケースが多いのが特徴です。
睡眠中に呼吸障害が起こる睡眠時無呼吸症候群や、寝ている間に足がピクンピクンと動く周期性四肢運動障害など、睡眠中に症状が出現する疾患が関係していることもあります。
また、休日にたくさんの睡眠時間をとって回復しようとする方に熟眠障害の傾向があるという指摘もあるため、普段熟睡出来ておらず、休日に寝溜めしているという方は注意が必要です。
不眠症と感じたら心療内科や睡眠外来で!
大事な本番前の緊張や不安、学校や仕事などのストレスが原因で一時的に不眠が続く場合もあり、「眠れない」という経験は誰もが一度はしているのではないでしょうか。
しかし、「不眠が週3日以上、3ヶ月以上持続する」という場合は一度医療機関を受診することをおすすめします。ストレス状態が改善してすぐに眠れるようになれば問題はありませんが、慢性的な不眠が続くと心身に悪影響を及ぼします。
また、不眠にはストレスなどの心理的なものだけでなく、睡眠中に症状が出現する病気が原因のこともあり、早めの受診は思わぬ病気の早期発見にも繋がります。
慢性化すると回復までに時間がかかることも多いため、不眠によって日常生活に支障が出ている場合は早めに病院へ行って相談してみましょう。
不眠症の改善や治し方について
薬物療法
現在の不眠治療は睡眠薬での薬物療法が中心です。睡眠薬と聞くと危ないイメージを持たれている方も多いようですが、適切に服用すれば過度に心配する必要はありません。
しかし、不眠症治療の目的は、薬がなくても十分な睡眠が得られるようになることです。依存性や認知機能障害の心配が少ない薬も開発されていますが、長期間にわたって使い続けることは推奨されていません。
医師や薬剤師と相談しながら、適切な量を服用し、徐々に服用量を減らしていけるようにしましょう。
また、睡眠薬はドラッグストアなどでも手軽に購入することができますが、不眠症に対する治療効果は確かめられていないため、あくまでも短期間の使用にとどめるようにしましょう。
非薬物療法
非薬物療法には大きく分けて「生活習慣の改善」と「認知行動療法」の2つがあります。
普段から不規則な生活リズムで生活している方は、まず適度な運動や規則正しい食生活、就寝時の行動の見直しなどを行い、生活リズムや睡眠環境を整えるだけでも効果が出る場合があります。
一方、すでに長期的な不眠で睡眠薬に心理的に頼ってしまっている方には考えと行動のパターンを変える認知行動療法が有効です。
しかし、どちらも全ての人に効果があるわけではなく、人によっては睡眠薬を使用する薬物療法と同時に行う場合もあります。不安障害やうつ病、睡眠中に症状が出る疾患などが原因の場合もあり、それぞれ治療法が異なるため不眠の診断がとても重要です。
不眠症についてのよくある質問について
不眠症の原因は女性と男性と異なる?
不眠症は男性よりも女性に多いとされていますが、これは生理的・心理的・社会的な要因はもちろんライフステージの変化に伴い、ホルモンが大きく変化することが原因だとされています。
女性は月経前や妊娠中には日中の眠気や不眠、出産後は子供の世話で睡眠不足、更年期になると不眠になりやすいという特徴があり、男性よりも睡眠のリズムが崩れやすいです。
家庭内での役割が重く、社会的な関わりが少ないことも原因の1つになりますので、周囲の協力を得て適度に休みながら気分転換を行うようにしましょう。
睡眠薬を使用するとやめられないですか?
睡眠薬と聞くと、「一度飲み始めると止められないのではないか」「どんどん量が増えてしまうのではないか」と不安を感じる人も多いかもしれませんが、決して危ない薬ではありません。
しかし、漠然と長期に渡って服用するのは良くありませんし、眠れるようになったからといって自分の判断で勝手に内服をやめてしまうと、服用前よりも不眠がひどくなることもあります。服用する量や期間など医師の適切な指導のもとで使用するようにしましょう。
不眠症と睡眠不足の違いはありますか?
不眠とは「寝床には入っているのに寝つきが悪い」「眠ってもすぐ目が覚めてしまう」「寝ているのに疲れが取れない」など、眠るのが困難で睡眠の質が低下している状態です。
一方、睡眠不足は睡眠の量が確保出来ていない状態のことを指します。ですので、不眠と睡眠不足は全くの別物です。
しかし、どちらも日中の眠気や体調不良をきたし、心身共に様々な不調の原因となりますので、健康を維持するためには質の良い十分な時間の睡眠が大切です。
不眠症とうつとの関連性はありますか?
うつ病と不眠症は高確率で併存することが知られており、うつ病患者の約8〜9割に不眠症の症状が出現すると報告されています。
予定時間よりも早く目が覚めてしまい、その後寝付けない「早朝覚醒」がうつ病に特異的な症状であることは有名ですが、うつ状態に最も出現しやすいのは、寝床に入っても眠れない「入眠困難」です。
また、うつ病が治ったとしても不眠症は改善されないことも多く、不眠症はうつ病再発の可能性を高めますので、うつ病と不眠症には密接な関係があると言えるでしょう。
不眠症と思ったらクリニックにて相談を
不眠症は日中のパフォーマンスが落ちるだけでなく、心身に様々な影響を及ぼします。
たかが不眠と自己判断するのではなく、心療内科や精神科、メンタルクリニックなどの医療機関を早めに受診して、適切な治療を行なっていきましょう。
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